(英エコノミスト誌 2020年8月29日号)

英国はドイツに何を学ぼうとしているのか

 定評のあるジャーナリスト、ジョン・カンプフナー氏の新刊『Why the Germans do it better(ドイツ人の方が上手にやる理由)』は、英国人心理の現状を大いに物語っている。

 英国政府は、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」による死から国民を守ってくれるはずだったイングランド公衆衛生局(PHE)を廃止し、ドイツの公衆衛生制度の要であるロベルト・コッホ研究所に範を取る新組織を立ち上げようとしている。

 中道のシンクタンクとして知られる社会市場財団(SMF)のトップ、ジェームズ・カークアップ氏は、「英国をもっとドイツのようにすること」が財団の目標だと話している。

 カークアップ氏ほどおおっぴらではないが、ほかの研究者もドイツの技能教育制度や社会保険市場を詳細に調べている。

 長きにわたる両国の強い絆を考えれば、英国はドイツを見習うべきだという議論が出てくることに意外感はない。

 英国は1714年にドイツのハノーバーから王族を迎え入れた。ビクトリア女王の時代には、ドイツ生まれのアルバート公子が妻のビクトリア女王と同じくらいイングランドの国造りに力を尽くした。

 福祉国家の概念はビスマルクに由来するし、第2次世界大戦後のドイツ憲法は、そのほとんどが英国人と米国人の手によって書かれたものだ。

 親密でありつつも張り合うということは、「ドイツ人の方が上手だ」という議論を英国人が以前から好んでいることを意味している。

 第1次世界大戦前には「国民的効率」の向上を求めるグループが、ドイツの二輪馬車に踏みつぶされないように英国は科学と教育にもっと投資する必要があると主張した。

 1960年代からは、英国の左派が、ドイツの「ステークホルダー資本主義」のモデルに学ぶべきだと唱えてきた。

 それでも、今日におけるドイツモデルへの熱意の急激な盛り上がりには目を見張るものがある。