(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年8月27日付)

米国の共和党は“トランプ党”に限りなく近づいた

 未来を思い描きたいのなら、ドナルド・トランプ・ジュニアが米国の輝かしくて美しい明日について叫び続けるところを想像するといい。永遠にそれが続くのだ。

 米国大統領の長男の姿は、ジョージ・オーウェルが描いた「ビッグ・ブラザー」がブーツで人の顔を踏みつける姿とは細かな部分で異なっているかもしれない。

 しかし、米共和党全国党大会が発したメッセージはオーウェル的だ。

変わり果てた共和党

 ドナルド・トランプ氏の党には、それと認知できる綱領もなく、大統領の2期目に向けた政策課題(アジェンダ)の影すらない。

 ゆえに、党内から反対意見が出る可能性もない。本人に代わって選挙運動を行う主な代理人には、自分の家族がずらりと並ぶ。

 メッセージは、「トランプ氏、トランプ氏のすべて、そしてトランプ氏だけ」というものだ。

 米国の民主主義の未来に疑問を呈する向きは後れている。この国の民主主義は、すでに半分が機能を停止している。

 民主主義を活気づけるのは政党だ。1人の人物を崇めるカルト集団と化した党と見分けがつく共和党は、もはや存在しない。

 共和党はもう保守政党ではなく、これといったイデオロギーを持った党でもない。その時々に、トランプ氏がこれだと言うものになっている。

 ある日は、北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)氏が米国最大の敵だと見なされるかもしれない。すると、聴衆は立ち上がって拍手をする。

 その翌日に、同じキム氏がトランプ氏の心の友だとされても、聴衆は同じように立ち上がっている、という具合だ。