(英エコノミスト誌 2020年8月29日号)

デモ隊を殴る警棒や毒を盛る注射器といった古い道具で権力を維持できるのかもしれないが、それは果たしていつまで有効だろうか。
市民が自由を求めて街頭での抗議行動に繰り出す様子を目にすることほど、気持ちが奮い立つことはない。そして、そうした人々が反発している独裁者にとっては、これほど恐ろしいことはない。
ベラルーシでは、大統領選挙で露骨な不正が行われた後、当局が国家暴力の行使をちらつかせているにもかかわらず、数十万もの人々がデモに参加している。
まさに1989年の蜂起を思い出させる光景だ。
ロシア極東のハバロフスクでは、同地方の知事の逮捕とモスクワのルールの押しつけに抗議する数万人規模のデモ行進が毎週行われている。
ウラジーミル・プーチン大統領は動揺している。
汚職批判の急先鋒で、ロシア大統領選挙でプーチン氏に挑む候補者の中では最も高い支持率を誇るアレクセイ・ナワリヌイ氏が毒を盛られてドイツ・ベルリンの病院に入院している理由が、これ以外に考えられるだろうか。
マフィア国家と昔ながらの独裁
恐怖で統治する政権は、自ら恐怖を覚える毎日を送る。
自分たちの嘘、盗み、蛮行の数々を国民がいつの日か容認しなくなるのではないか、と恐れ続けるのだ。そのため、プロパガンダや迫害、利益供与といった手段で権力の座にしがみつこうとする。
しかし、プーチン氏はいよいよ、手品のネタが切れてきたように見える。
隣国ベラルーシでトラブルに陥っている仲間のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領も、行き詰まりつつあるように見える。
クレムリンは否定しているものの、両国の政権が警棒と注射器を頼りにしているのはそのためだ。