(英エコノミスト誌 2020年8月22日号)

米国では新型コロナ禍の現在、空前のIPOブームに沸いている

ハイテク業界のスタートアップ企業が、このパンデミックのさなかに株式公開を切望する理由とは。

 新規株式公開(IPO)は死んだ、IPO万歳――。新型コロナウイルスのパンデミックが襲ってきた今年3月、IPOは早々に犠牲になると予想された。

 ハイテク業界のスタートアップ企業による上場は特にそう思われていた。世紀に一度の危機のさなかに、いったい誰が株式公開などしたがるのか、というわけだ。

 ふたを開けてみると、その数は結構多かった。米国のIPO市場は5月後半までほぼ干上がっていたものの、ここ2カ月ほどで猛烈に巻き返している。

 シリコンバレーで最近行われた、あるいは近々予定されている株式上場案件を見渡す限り、中国のアント・グループに匹敵するものはない。

 中国の電子商取引大手アリババ集団の関連会社で、決済サービスを提供しているアントは、今年10月までに中国で300億ドルという記録的な額の資金を調達したい考えだ。

 その場合、同社の価値は約2000億ドルと評価される可能性がある。

「根拠なき熱狂」の香り

 しかし、米国のハイテク系スタートアップは今年に入ってすでに100億ドルを調達しているうえに、今後も多くの案件が予定されている(下図参照)。

 8月19日には民泊仲介大手のエアビーアンドビーがIPO申請に踏み切った。

 また、クラウド・コンピューティングのソフトウエアを制作するスノーフレイク・コンピューティング、食品配達のドアダッシュ、野菜配達のインスタカートなど、「ユニコーン」と呼ばれる非公開企業が株式公開に備えていると報じられている。

 データ分析サービスを手がけるピッチブックによれば、データ解析会社のパランティア・テクノロジーズが発行済みの株式を流通市場に直接売り出す準備をしており、これら5社の最新のバリュエーション(企業価値評価)を合計すると800億ドルに上る。