(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年8月21日付)

ミシェル・オバマ氏は17日、夫がかつて抱いていた世界観を優しく葬り去り、それ以外の「冷酷で厳しい真実」を米国に突きつけた。
「私たちが暮らしている国は、ひどく分断されています」
米国の民主党大会初日のスピーチで、ミシェル氏はこう述べた。「これ以上ひどい状況にはなり得ないと思っている方、信じてください、この状況はもっとひどくなり得ます」。
言うまでもなく、夫のバラク・オバマ氏は2004年の民主党大会でこれとは正反対の前提に立ち、「リベラルなアメリカも、保守的なアメリカもない。あるのはアメリカ合衆国だ」と演説してその名を全米に知らしめた。
今となっては、非常に無邪気に聞こえるフレーズだ。
今年の党大会は別の国で行われているように思える。それも民主党と共和党のそれが別々の国で行われているような感じがするほどだ。
民主党のバーチャル党大会は、過去にあった不当な行為を根絶しようとする虹色の米国を描いている。
ここで言う虹色とは、黒、白、茶、ゲイ、トランスジェンダー、様々な障害の有無、意識的な都会派という七色だ。
片や8月24日に始まる共和党の党大会は、圧倒的に白人、郊外、小さな町、そしてほぼ全員がストレート(異性愛者)という属性で占められているように見えるだろう。
同党は、歴史の状況をポリティカル・コレクトネス(政治的公正さ)が唱えられる前の時代に戻すことを約束している。