(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は、米国で新型コロナウイルス感染が広がる直前の3月上旬の水準にまで回復した(1バレル=40ドル台前半)。

市場は需要超過だが在庫は記録的規模に

 まず供給サイドの動きを見てみると、OPEC加盟国の7月の原油生産量は、前月比97万バレル増の日量2332万バレルだった。サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)は、原油価格を上昇させるために、6月の原油生産量をOPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの産油国)で決定された減産分に加え、日量118万バレルの追加減産を行っていたが、7月にそれを打ち切ったのが主な要因である。

 8月からOPECプラスは、協調減産の幅を日量960万バレルから日量770万バレルに縮小した(期限は今年12月末まで)。これまでの減産の遵守率が低かったイラク等が今後「埋め合わせ減産」を行うことから、実質的な減産幅は810~830万バレルとなる見通しである。

 世界最大の原油生産国となった米国の生産量は、コロナ禍前には日量1310万バレルを誇っていたが、足元では日量1070万バレルにまで減少している。大量の債務を抱えたシェール企業にとって、現在の原油価格では収益が上がらないからである。

 次に需要サイドだが、国際協力基金(IMF)は8月4日、「今年の世界の原油需要は前年に比べて8%減少する」との見通しを示した。