マスクをして東京・新宿駅の前を行き交う人々(2020年8月3日、写真:つのだよしお/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 新型コロナウイルスの感染が、東京から全国に広がっている。大阪府・愛知県・福岡県でも毎日100人を超える検査陽性者が出て、コロナは「東京問題」ではなくなった。

 しかし陽性者数というのは、統計的には無意味な数字である。今のPCR検査は、サンプルが大きく片寄っているからだ。重要なのは死者数である。

新型コロナはインフルエンザ未満の風邪

 4月までは発熱などの症状があって保健所に相談した人をPCR検査していたが、マスコミが「検査を増やせ」と騒ぐので、5月から検査を無症状の人にも拡大し、分母が増えたので検査陽性率は下がった。

 東京では6月から新しい検査キットで感度が上がったので、微量のウイルスも検出するようになり、陽性率が上がったが、7月は図1のように6.5%前後でほぼ安定している。

図1 東京都の検査陽性率(出所:東京都)
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 普通の感染症では、このようにサンプルが大きく変化する検査結果を感染の指標とはしない。たとえばインフルエンザの患者数は、全国に約5000ある観測サイト(病院)の患者数から推定する。国立感染症研究所の集計では、今シーズンのインフルエンザ患者は、728万人と推定される。

 これは最近では少ないほうで、2019年のシーズンでは累計1176万人が発症した。致死率は0.1%程度なので、約1万人が死亡したと推定される。