(英エコノミスト電子版 2020年7月27日付)

入場制限を決めたベネチアだったが、今では観光客がほとんどいなくなった

 ベネチア市民はかなり前から、観光客が多すぎるせいで自分たちの街が歴史のディズニーランドになってしまっていると嘆いていた。

 その訴えが正しいことを証明するかのように、2018年にはベネチア市議会が回転式のゲートを設けた。毎年4000万人前後にのぼる行楽客を制御するためだ。

「ラ・セレニッシマ(「晴朗きわまる地」という意味)」という愛称を持つこの都市はその翌年、さらに一歩踏み込み、ゲートを通る訪問者に1日当たり最大10ユーロ(約1250円)を徴求する計画も発表した。

 そして今、ベネチアの問題は、観光客が「多すぎること」から「少なすぎること」へと変わっている。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」のパンデミックのために、海外旅行に出掛ける人が激減しているのだ。

 政府間シンクタンクの経済協力開発機構(OECD)によれば、2020年の海外旅行者数(国際観光客到着数)は全世界ベースで前年比60%減になると見込まれており、パンデミックの第2波によって景気の回復が遅れれば最大で80%減もあり得るという。

 そのためイタリアを含む複数の国の政府は、自国の観光業を甦らせようと、行楽客に直接補助金を支給するという急進的な手法を試みている。

 しかし、欧州の観光地でCOVID-19の感染がこのところ急拡大し、隔離のルールが突然導入されて休暇が台無しになるリスクも高まっていることから、納税者のお金を湯水のごとく使うこのやり方は賢明なのかという疑念も強まっている。

各地で相次ぐホリデー支援

 各国政府は以前から、観光業界を間接的に支援しようとしてきた。

 航空会社に助成金を出したり、空港やその他のインフラに補助金を支出したり、ホテルやレストランで支払う付加価値税(VAT)の税率を引き下げたりしてきた。

 行楽客に現金やクーポン券を手渡す施策は、ほとんどの政府にとって新しい取り組みだが、あっという間に人気を得ている。

 イタリアは6月、総額24億ユーロの「ホリデー・ボーナス」事業なるものをぶち上げた。