(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年7月31日付)

米国では新型コロナウイルス感染症のワクチンが完成しても打ちたくないと言う人が多い

 今年10月の後半に、ドナルド・トランプ米大統領が思いもよらない発表を行う。

 従来型の投票日直前のショック――戦争とか、テロリストによる攻撃がまもなく始まるといった話など――とは異なり、今回の発表は恐怖ではなく希望に関係している。

 米国大統領の独創的な問題解決能力のおかげで「チャイナウイルス」が打ち負かされた。米国がワクチンの開発に成功し、年末までにすべての市民が利用できるようになる。ぜひオンラインで予防接種を予約されたい――。

 トランプ氏がこんなことを宣言し、選挙結果を左右するほどの数の有権者を揺さぶる事態はあり得る。

 だがそれ以上に大きな危険は、トランプ氏が米国民の科学不信を強めてしまうことだ。

 先日行われたある世論調査によれば、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」のワクチンを必ず接種するつもりでいると答えた米国人は半分にとどまった。

 全米を対象とするほかの複数の世論調査でも、予防接種は絶対にしないという回答が全体の4分の1から3分の1を占めている。

パンデミックを謳歌するワクチン反対派

 つまり、本当に何人いるかはともかく、ワクチン反対派はCOVID-19と同様に拡大し、大変なパンデミックに発展している。

 集団免疫を獲得するには、米国民の少なくとも4分の3がワクチン接種をしなければならない。

 感染症は不信感を糧に栄える。その意味で、今日の米国よりもウイルスが増殖しやすいペトリ皿を想像するのは難しい。

 この国の「ワクチン・ヘジタンシー(ワクチン接種をためらう考え方や行動のこと)」の中には、ちゃんとした根拠があるものもある。