横綱白鵬(1月7日、明治神宮での土俵入り、写真:ロイター/アフロ)

 大相撲名古屋場所は新型コロナ感染予防の移動制限などから東京開催となり、観客も桝席に一人という具合に制約されている。

 また、飛沫感染があってはいけないというので、大声を出さないで拍手をするように要請されているが、力士にとっては物足りないに違いない。

 そうした中で、話題は前人未到の金字塔を次々に打ち立てていく横綱白鵬と新大関朝乃山の活躍である。

 期待に違わず、2人は9日目までは勝ちっぱなしで白星を重ねてきた。そして迎えた10日目、横綱は気合十分で北勝富士を一気に押し出し、横綱出場記録1000回を10連勝の白星で飾った。

 他方の大関は関脇御嶽海を土俵際まで攻め込んだが上手投げでかわされ初黒星を喫した。

 ところで、35歳の横綱に残された目標は何であろうか。

 角界のほとんどの記録を一新し、今後何十年、いや決して更新されそうもない記録ずくめであるが、白鵬の名を汚してきたのは日本相撲協会が掲げる「国技である相撲道」に外れる言動が時折みられることである。

 綱を張り続けて大相撲の窮地を救ってきたという自負もあろう。しかし、相撲は長い歴史と伝統に培われた「日本の文化」であることだけはしっかり理解してもらわなければならない。

 記録ずくめの大横綱・白鵬には汚名を払拭してやがて迎える引退を「有終の美」で飾ってほしい。

白鵬に欲しい成績に見合った評価

 今場所の3日目、遠藤戦の取り組みはやはり相撲道に悖る一番に見えた。遠藤を土俵下に倒した後の白鵬の仕草は、「因縁の相手に勝った」「これで連勝を重ねられる」と、内心に喜びを秘めた演技としか思えなかった。

 白鵬は遠藤戦では一段と力が入るように見受けられる。

 張り手とかち上げで出血させたこともあるが、今場所も力が入り見応えのある取り組みとなり土俵下に押し倒し、勢い余って横転した遠藤を飛び越えて土俵下に降り、通路に飛び出してしまった。

 そこまでは余勢のなせるものであろうが、その後はランニングの様に腕を振り走り続けた。10メートルくらい行ったのではないだろうか。一瞬、歌舞伎役者が花道を引き上げる姿と二重写しになった。

 本来は、土俵下に崩れ落ちた力士に手を貸すなどの振る舞いが見ていて気持ち良い仕草であるが、そうした気配は微塵も感じられなかった。

 相撲評論も行っている漫画家のやくみつる氏は白鵬は叩き出している数字に見合う評価が得られない「悲劇の横綱になる」(『WiLL』2018年4月号)と予言するが、残念でならない。