グアム海軍基地のあるアプラ湾に入港する空母ニミッツ(2020年6月24日、出所:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

 米インド太平洋軍司令官のフィリップ・デービッドソン海軍大将は、米軍がグアム島にイージス・アショア(地上設置式弾道ミサイル防衛システム)を配備することを公表した。日本列島上に2セット配備することにしていたイージス・アショアの調達を突然中止した日本政府の決定を受けての対応ということになる。

アメリカに好都合な日本のBMD強化

 中国軍と北朝鮮軍の弾道ミサイル戦力の飛躍的な強化に伴い、日本や韓国のみならずアメリカの軍事戦略にとっても、日本や韓国、そして日本海、東シナ海から西太平洋にかけての海域における「弾道ミサイル防衛(BMD)」態勢の強化は、重要性を著しく増してきている。

 日本政府は基本的に軍事力の増強には消極的であるが、BMD戦力の強化に関しては比較的積極的であった。その状況はアメリカ側にとって幸いであったといえよう。

 日本防衛当局は、防空戦闘艦としての海自イージス駆逐艦を改修してBMD能力を付加させたり、BMD能力を持ったイージス艦を追加建造したり、在日米軍航空基地をはじめとする重要施設を防御する十分な数のPAC-3を調達してきている(沖縄には多数の空自PAC-3が配備されている)。それに加えて、24時間365日途切れなくBMD態勢を継続できるイージス・アショアを2セット調達して、日本列島の大半を防御する方向性で動いていた。