5月14日、39県で緊急事態宣言を解除することを記者会見で発表する安倍晋三首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(黒木 亮:作家)

 日本の大手メディア(新聞、テレビ)が政治家の疑惑追及に消極的なのは、国民が常々不満に思っていることである。政府・安倍首相の森友・加計問題、桜を見る会疑惑、小池都知事の学歴詐称疑惑などが、メディアのこうした姿勢のために、今も野放し状態だ。メディアの機能不全は、民主主義の根幹にもかかわる重大な問題である。

 筆者は英国に住んで32年になるが、欧米メディアの政治家に対する妥協のない報道姿勢を見るにつけ、日本のメディアの根本的改革の必要性を痛感させられる。

 7月24日の英国の公共メディアBBCによるボリス・ジョンソン首相の単独インタビュー(https://www.youtube.com/watch?v=3rm45jiPrdw)もそうした思いをあらためて強くするものだった。

首相とのサシのインタビューでコロナ対策を追及する記者

 首相をインタビューしたのは、ポリティカル・エディター(政治部長的職位)のローラ・キューエンスバーグ氏(女性)。

 13分半のインタビューの冒頭は、「新型コロナ問題に関して、あなたは何を間違えたと思いますか?」という質問で始まっている。

 これに対して首相は「政府は最初の2、3週間ないしは2、3カ月、新型コロナのことを十分に理解していなかったと思う。特に無症状でうつるという点に関して」と認めた。これは「政府は適切な時期に適切な対策をとってきた」という従来の姿勢からの転換だった。

 キューエンスバーグ氏が「理解が十分でなかったので、対策が遅かったということですね?」と問うと、首相は「人々が求めているのは次の段階の準備のために今何をするかだ。過去のことではない」と話題を変えようとした。

 キューエンスバーグ氏は「人々は何が起きたか知りたがっている。4万5000人が亡くなっているのですよ。何が間違いだったと思いますか?」と反論し、「新型コロナのことを当初は十分に理解できなかったというのはよく分かります。しかし、あなたは最初から事態を十分真剣に受け取りましたか? 3月3、5、7、9日、あなたは人々と握手をしていますね。しかし、その時点で政府はそういうことをするなと人々にアドバイスをしていました」とたたみかける。

 首相は「いや、それは当時の政府のアドバイスではない」と逃げようとしたが、キューエンスバーグ氏は「政府は3月3日にそうアドバイスしています」と指摘する。

 この後も「大事なことは今後について話すことだ」と言う首相と、「そのためにこそ、何が間違いだったかを明らかにすべきだ。ロックダウンはtoo lateだったと後悔していないか?」と言うキューエンスバーグ氏の応酬が繰り返される。

 苛立った首相は「あなたはインクワイアリー(第三者調査)をしようとしている」と不満を口にするが、キューエンスバーグ氏「政府は当初、集会も禁じなかったし、マスク着用も推奨しなかったし、地域における検査も実施しなかった。今後は速やかに対策を実行できるのか?」と譲らない。