GoTo事業の対象から、東京や若者・高齢者を除外せざるを得なくなった 赤羽一嘉国土交通相。写真は今年3月の参議院予算委員会でのもの(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 首都圏をはじめとして、全国で新型コロナウイルスの感染がまた拡大している。7月17日の感染者は全国で596人、東京都で293人と緊急事態宣言解除後で最多となっている。大阪も53人と多い。

 そのような中で、政府は、観光振興を目的とするGoToキャンペーンを、予定(8月上旬)よりも前倒しで7月22日から実施することを決めている。これは、旅行代金35%分の割引と土産店などで使える15%分のクーポン券を組み合わせたもので、旅行代金の半額を政府が支援する仕組みである。

 観光客の減少で苦境に立つ観光業界の要望を容れて、4連休の7月22日から、まずは35%の割引分から先行して実施することを決めたのである。これに対しては、感染者再急増という状況を受けて、地方自治体の長などから、時期尚早だとして危惧する声が高まった。

 そのため、16日、政府は東京発着旅行はキャンペーンの対象としないことに決めた。16日のコロナ感染者は、東京が286人とダントツだが、埼玉県が49人、神奈川県が47人、千葉県は32人もある。急に東京だけを除外しても混乱を招くだけである。

 埼玉県人や神奈川県人が大宮駅や新横浜駅から新幹線で観光旅行に行くのはよいのだろうかと疑問に思うが、彼らが羽田空港や東京駅を使っても通過だけなので旅行可能だという。ここまで来ると、少し無理がある。首都圏は一体であることは、毎日の感染者数が示しているからである。東京都民だけが逆差別である。

 また、大阪府も15日は61人、16日は66人と急増しており、大阪発着旅行も同じような対応が必要ではないのだろうか。原則も明確ではなく、付け焼き刃的な対応は、かえって問題を起こすような気がする。

 しかし、観光業界を救う政策を止めるわけにはいかないというので、ギリギリの妥協点を図ったようである。小池都知事が15日に、警戒レベルを最高段階に引き上げたのも、いわば「渡りに船」だったようだ。

「1日2万件のPCR検査」はまだ実現していないのに

 このキャンペーンは、4月7日に閣議決定した補正予算に計上されたもので、総額約1兆7000億円である。この日は、安倍首相が、首都圏1都3県と大阪、兵庫、福岡に緊急事態宣言を発令した日である。

 当初から、この予算措置には批判が多かった。緊急事態という目の前の危機への対応ではなく、感染が収束した後の観光需要喚起策であり、政策の優先順位が間違っているというのが、主たる指摘である。そして、事務委託費の上限が3095億円と予算の18%をも占めていることも、算定基準が曖昧だと問題になったのである。