トランプ大統領はプーチン大統領になぜ弱腰なのだろうか

マウントラシュモア演説ショー不発

 7月4日の米独立記念日。

 本来なら米大統領は全国民の対し、「心を一つにして合衆国誕生を祝おうではないか」と呼びかける日だ。

 ところがドナルド・トランプ大統領は、サウスダコタ州のマウントラシュモア国立公園*1で行った演説で、国民の団結を呼びかけるどころが、分裂する国論の溝をさらに広げてしまった。

*1=ジョージ・ワシントン初代、トーマス・ジェファーソン第3代、エイブラハム・リンカーン第6代、セオドア・ルーズベルト第26代各大統領の顔が岩山に刻まれている。著名な彫刻家、ガトソン・ボーグラムの作。4人の大統領を選んだのは「米史上で最も重要な仕事をした大統領」だからだという。

「ブラック・ライブス・マター」(黒人の命も大切だ)運動は当初の警察改革から人種差別完全撤廃へ、さらには南北戦争で奴隷制維持のために戦った将軍たちの銅像や記念碑の撤去要求へと、すそ野を広げた。

 当初は黒人やリベラル派の白人が運動の中心だったが、その後、非合法な破壊行動に出る白人アナーキストたちの動きが目立ってきた。

 トランプ大統領は、こうした動きに「極左ファシズムだ」「左翼文化革命だ」と非難した。過激な破壊活動を武力で鎮圧することをちらつかせ、対決姿勢を露わにした。

 そもそも、トランプ氏は、米国が新型コロナウイルス禍の真っ只中にいるにもかかわらず、マウントラシュモア演説を強行した。

 11月3日の大統領選に向けたジョー・バイデン民主党大統領候補(正式にはまだ指名はされてはいない)との「前哨戦」での劣勢が伝えられていることも、その背景にある。

 トランプ氏の戦術は、今なおある支持率40%を死守し、共和党に有利にできている選挙人制度で逃げ切りを図ることだ。

 歴代4人の「偉大な大統領」を背に自らも4人に匹敵する大統領だというところを見せつけようとしたに違いない。