(英エコノミスト誌 7月4日号)

ブラジルは新型コロナウイルス感染症の患者数で米国と1、2位を争うまでに。経済への打撃も深刻だ(写真はリオデジャネイロ)

今回の災難は長年のパターンに合致している。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」に襲われると、厳しい現実があらわにされる。

 ここ数週間は中南米がパンデミック(世界的大流行)の中心地になっており、1日の死亡者数の半分以上を占めている。

 おまけに、この地域は深刻な医療上の危機に陥っているだけでなく、ほかの発展途上国をはるかに上回る経済の悪化にも見舞われている。

 国際通貨基金(IMF)の見通しによれば、中南米地域の域内総生産(GDP)は2020年に9.4%縮小するという。新興国全体の予想値(3%減)の3倍を超える落ち込みだ。

 パンデミックによる経済・社会の荒廃は、ぱっとしない20年間に続いて訪れただけに、なお一層骨身に堪える。

 大変な新興国ブームに沸いた2000年代と2010年代に、投資家は中南米諸国の先行きに期待を膨らませたものの、失望に終わった。

 この間に得られたわずかな進歩が失われてしまうのは、ほぼ確実のように思われる。

 中南米の国々は、均質にはほど遠い。しかしその多くは、この地域が世界で最も深刻な打撃を被るのに寄与した特徴をいくつか共有している。

 一部には、厳格なロックダウン(都市封鎖)に踏み切った国もある。例えばペルーは、経済の基盤をなす鉱山の閉鎖という異例の策を講じており、IMFが同国の今年の経済成長率をマイナス14%と予想する一因になっている。

 しかし、人口が多く人口密度も高い都市では、貧困にあえぐ住民の割合が高いことや人口の大部分がインフォーマルな仕事(政府の統計で把握されないという意味で「非公式的な仕事」)に就いていることなどにより、ロックダウンの効果は限定的となっている。