マニラの街並み(本文と直接の関係はありません)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 フィリピンで、陸軍情報部員の兵士4人が、国家警察の警察官9人によって銃で殺害されるという事件が起きた。

 警察側は発生直後から「不幸な出会いがしらの事故である」「銃撃戦の結果」「銃撃されそうになり反撃した」「同士討ち」などとの見解を示しているが、これに対して陸軍側は「事故などではなく、一方的に警察官が兵士を射殺した立派な殺人事件である」として主張が真っ向から対立、現在は国家捜査局や司法省が調査に乗り出す事態となっている。

 事件が起きたのはフィリピン南部のイスラム系テロ組織が活動する地域だ。陸軍情報部員はテロ組織のメンバー摘発に向かう途中だった。このことから「摘発を事前に察知した警察による妨害工作の可能性」も取りざたされている。さらには、ネット上に出回っている発生直前・直後の現場映像から、国家警察と陸軍の根深い対立や、テロ組織と治安当局の「癒着」などが背景にあるとの見方も出ている。果たしてどこまで真相解明が進むのか、フィリピン国民は固唾を飲んで見守っている。

二転三転する警察の説明

 事件はフィリピン南西部スールー州の州都ホロ市内ワレド地区にあるホロ警察署近くの路上で6月29日に起きた。同日午後2時25分ごろ、秘密工作のため私服に身を包んだ4人の兵士が乗った1台のSUV車両がホロ市内を走行中、警察車両から追跡を受けた。一説では停車を求められたという。その後、警察官らの発砲で4人は殺害された。遺体は車両の進行方向左側の路上に2体、後方で1体が確認された。その後の警察の発表では残る1人は車内で発見されたが、すでに死亡していたという。

 現場の状況は、周辺の複数のCCTV(監視カメラ)の動画に記録されていた。特に4兵士が殺害された現場が映る車両の左前方の位置にあるCCTVが、事件発生直後の様子を克明に記録していた。

 だが、警察官による発砲と兵士が撃たれる肝心の場面は公表されているどのCCTVの画面もとらえておらず、実際に何が起きたのかは前後や周囲の状況からしか分からないのが現状だ。

(参考:捜査状況を報じる「マニラ・ブリティン」紙のオンライン記事。兵士殺害直後の現場や兵士らが乗っていたSUVの写真も掲載されている)
https://news.mb.com.ph/2020/06/30/nbi-to-oversee-probe-of-jolo-misencounter/