(英エコノミスト誌 2020年7月4日号)

デラウエア州の民主党集会で講演するジョー・バイデン氏(6月30日、写真:ロイター/アフロ)

レトロ(復古)がラディカル(急進)になり得る仕組みとは。

 ドナルド・トランプ氏の大統領時代が歴史として記述される時がきたら、ひょっとすると、今年6月初めにホワイトハウス前のラファイエット広場で設けられた写真撮影の機会が転換点として扱われるかもしれない。

 大統領選への出馬を2015年に表明して以来、トランプ氏の政治手法は、自分に集まる注目を常に最大化することだった。

 しかし今回のラファイエット広場での突飛な行動には、キリスト教徒が不快感を覚えた。大統領が手に持っていた聖書を、演劇の小道具のように振り回したからだ。

 広場での一件には同行した米軍の最高司令官(統合参謀本部議長)も困惑し、平和的に抗議していた人々に催涙ガスが使われたりした政治的なショーに参加したことをのちに謝罪した。

 だがそれ以上に重要なのは、このショーが成功しなかったことだ。

 トランプ氏は指揮を執っているどころか、必死になっているように見えたのだ。権力が見た目だけに基づく時、それは突然消えてしまうことがある。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」が米国を襲うまでは、休むことなく成長する経済のおかげで、トランプ氏が再選されない可能性よりも再選される可能性の方が高いように思われた。

 景気が良い時には現職が勝利することがほとんどだ。

 全米規模の世論調査による支持率でライバルのジョー・バイデン氏に少し後れを取っていたにもかかわらず、本誌エコノミストの選挙モデルではトランプ氏がわずかの差で本命視されていた。