(花園 祐:中国在住ジャーナリスト)

 応仁の乱(1467年)を契機に始まった日本の戦国時代は、豊臣秀吉の小田原征伐(1590年)、天下統一によって一応の幕を閉じました。これ以降、関ヶ原の戦い(1600年)、大坂の陣(1614~1615年)という2つの合戦を除くと国内に大きな戦闘はなく、その後の江戸時代を通じて、日本は長い平和な時代を謳歌することになります。

 一方、海を隔てた中国では同時期、朱元璋によって興された「明」(1368~1644年)の権威が衰退し、甚だしい混乱の最中にありました。国内からは反乱、国外からは異民族の侵入が相次ぎ、まさに乱世というべき時代を迎えていました。また中国東北部に集住していた満州族からはヌルハチ(1559~1626年)が登場し、後に中国最後の王朝となる「清」(1644~1912年)の前身となる国を築きます。

 この明から清へと至る時代は、中国では度々ドラマ化されるなど高い人気を博していますが、日本ではほとんど知られていないようです。そこで今回から3回にわたって、明が滅び、清が興り、その支配を確立するに至るまでの一連の過程を、わかりやすく紹介したいと思います。初回の今回は、明の衰退とヌルハチによる満州帝国の設立過程を中心に取り上げます。