6月26日に、東京都千代田区、神田神保町(かんだじんぼうちょう)のすずらん通りにあるキッチン南海(神保町店、本店)が多くのファンに惜しまれつつ、54年の歴史にピリオドを打ち閉店した。

 一部のカレー好きの間で圧倒的な人気を誇った黒いカツカレーで有名な(ほかにヒラメフライやしょうが焼きなども)、行列の絶えない人気店だったので、まさかコロナ禍の影響ではないだろうと思ったが、建物が老朽化したためという理由であった。

 キッチン南海は前の週から長蛇の行列で、日によっては商店街をはみだして100メートルほどの行列ができていたようである。テレビも数局来たらしい。6月13日の「毎日新聞」には「神保町消える懐かしの店」「安い・おいしい・学生の味方」なる記事が出た。だが、実際には「おじさんサラリーマンの味方」だった。

キッチン南海神保町店があった神田神保町界隈は、以前から古書店が多いことで有名だが、そのほか出版社や大学なども多く、「本の街」と言える(Googleマップ)
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このすずらん通りの店でなくてはならない

 キッチン南海はわたしにとっては特別な店である。こんなにひとつの料理を長く食べつづけたのはここのカツカレー以外にない。それにこのすずらん通りの店でなくてはならない。キッチン南海は神田界隈にほかに2店あったが、そちらのカツカレーはまったく味が違ったのである。