同氏の心の中では、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)はいまだに敵であり、ベルリンの壁の崩壊前に米国政府が抱いていたロシアへの敬意を回復させることがクレムリンの目標になっている。

 ところがその間ずっと、経済面と戦略面の現実は正反対の方向に進んできた。

 COVID-19のパンデミックはロシアに大打撃を与えている。世界経済の減速も同様なダメージをもたらしている。

 原油価格の下落は経済面の柔軟性と、外国で冒険主義に走るための資金とを現体制から奪い去った。

 ウクライナにおける失地奪回政策や、シリアおよびリビアへのご都合主義的な介入についても、遂行する資金的な余裕がないように見え始めた。

 世界銀行がまとめた名目国民所得ランキングによれば、ロシアは現在第11位で、イタリアやカナダ、ブラジルなどの後塵を拝している。

 ロシアの影響力は今や、その大半が核兵器とプーチン氏の姿勢――ライバルと見なされる国を持ち前の技術力と軍事力で混乱・不安定化させることもいとわない姿勢――から主に生じているのが現状だ。

トランプ大統領がNATOを壊してくれる?

 もちろん、プーチン大統領は今年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が再選されることを当てにしている可能性がある。

 ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、ホワイトハウスで働いた日々の回顧録に記した気になる指摘の一つに、大統領が欧州の同盟国を著しく軽蔑していたというものがある。

 もう一押しすればトランプ氏はNATOを内側から破壊してくれる、とプーチン氏は考えているのかもしれない。