パンデミックに備えた新たな医療体制を整備すべきだ(写真:ロイター/アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。8回目の今回は迫りくる病院経営の崩壊と新たな医療システムの構築について。(第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回はこちら)

※NFIの設立記念シンポジウムが7月7日に開催されます。詳細はこちらをご覧ください。

経営危機に瀕する全国の医療機関

 新型コロナウイルス感染症は4月のピーク時より感染者数は大幅に減っているが、第2波、第3波の襲来というリスクは依然として残っている。その中で今、ニュースを賑わせているのが、新たな犠牲者、すなわち経営危機に陥った医療機関である。

 感染拡大によって入院患者が急増し始めた3月末から4月、政府や医師会が強く警戒したのが、患者の急増によって病院の対応能力が限界を超え、通常の患者の治療も困難になり、医療機関が機能不全に陥る「医療崩壊」であった。現在、その危機は去ったものの、これから起こりかねないのが、医療機関の経営難が引き起こす病院の倒産や閉鎖による「医療崩壊」だ。