「8割おじさん」として有名になった北大の西浦博教授のように、高度の数理モデルを使って感染リスクを分析し、有効な行動変容のあり方を示唆した専門家もいた(写真:ZUMA Press/アフロ)。

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。(第1回第2回第3回第4回第5回第6回はこちら)

※NFIの設立記念シンポジウムが7月7日に開催されます。詳細はこちらをご覧ください。

一般人が頼れる情報とは?

 人類は今、世界中で新型コロナウイルスという敵と必死に戦っている。この未知のウイルスがいかなるものか、われわれはどのように感染し、またどれくらいの人たちが感染し、そのうち何%くらいの人たちが亡くなるのか。未知の脅威に対して、すべての国民が不安に陥り、感染の恐れにおののきながら日常生活を送ることを余儀なくされている。

 では、感染を避けるためには、何をすればよいのか、すでに感染は収束に向かっているのか、医療崩壊のリスクはどれくらいあるのか。それを知るために、多数の人々が、新型コロナウイルスについての解説情報にアクセスし、少しでも不安の要素を取り除こうとしている。現代は、WebサイトやSNSを通して多数の情報にアクセスすることができ、また、自ら知り得たことを発信して不特定多数の人々の伝えることもできる時代だ。

 さまざまな情報が多様なルートを通って流布しているが、一般人にとって頼りになる情報は、何といっても専門家が発信する情報である。医学、中でも公衆衛生学や疫学の専門家の解説はとりわけ傾聴に値する。「8割おじさん」として有名になった北海道大学の西浦博教授のように、高度の数理モデルを使って感染リスクを分析し、有効な行動変容のあり方を示唆してくれる専門家もいる。