6月23日、四川省にある西昌衛星発射センターから打ち上げられた、人工衛星「北斗3号」を搭載した長征3Bロケット(写真:新華社/アフロ)

 おそらく、習近平政権としては、7月1日の中国共産党創建99周年までに、何らかの「国家的成功」が、どうしても欲しかったのだろう。

「5、4、3、2、1、点火!」

 6月23日午前9時43分、中国の衛星ナビゲーション・システム「北斗三号」の最後となる30基目の衛星が、四川省の西昌(Xichang)衛星発射センターから打ち上げられた。予定では今年の年末までに発射することになっていたので、半年早く前倒しして任務を成し遂げたことになる。

脱米国の衛星通信システム、「世界の半数以上の国が使用する」

 北斗三号のうち、24基が高度2万kmのMEO衛星(地球中円軌道衛星)。3基が高度3万6000kmのIGSO衛星(傾斜地球同歩軌道衛星)。残り3基も高度3万6000kmのGEO衛星(地球静止軌道衛星)である。

 世界には現在、4つの衛星ナビゲーション・システムがある。アメリカのGPS、EUのGalileo、ロシアのGLONASS、そして中国の北斗(BDS)だ。中国の官製メディアは、この4つのシステムを比較しながら、「北斗こそは最も先端的なシステム」「北斗システムは100%、中国の国産品を使ったシステム」「世界の半数以上の国々が使用することになる」などと喧伝していた。

 例えば、10cmの大きさまで識別できるのは、北斗だけだという。北斗システムが優れているのはたしかだ。私は、普段日本ではアメリカのGPSを使ったグーグルマップを使い、中国へ行くと北斗のシステムを使った「高徳マップ」を使っているが、「高徳マップ」の方が若干、精密だというのが、使ってみての実感である。

 そもそも中国が、独自の衛星通信システムを作り始めた経緯について、中国人からこんな話を聞いたことがある。

「1991年の湾岸戦争の開戦時、アメリカは全世界のGPSを、一時的にストップさせた。この措置によって、GPSに頼っていた中国はパニックに陥った。それで中国も、特に人民解放軍が強い声を上げて、アメリカに左右されない独自の衛星通信システムを持とうということになった」

 このような経緯から、北斗システムの建設を担ったのは、人民解放軍とそれに付随する国有企業群だった。そもそも中国では、宇宙開発の担い手も人民解放軍であり、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)のような非軍事団体ではない。