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 先の国会で与野党が激しく対立した検察庁法改正案をよそに、衆院国土交通委員会では自民党から共産党の議員に至るまで全会一致で、参院でも6月9日に賛成多数で、ある法案が可決された。

 テレビや新聞がほとんど報じることのなかったその法律は、賃貸住宅管理業務適正化法。いわゆる「サブリース規制法」だ。

 サブリースとは、業者が土地の所有者にアパートを建築させた後に一括借り上げして、入居者に転借する方式を意味する。富裕層の相続税対策に効果的だったため、不動産業界では大手から新興まで多くの業者が積極的に地主とサブリース契約を結び、次々にアパートを建築していた。

 今回のサブリース規制法を立案したのは国土交通省。法制化のきっかけは、2年前に破綻した投資用不動産販売会社「スマートデイズ」の経営破綻だった。

 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズの破綻後、銀行へ提出する融資書類の改竄や、オーナーへサブリース契約のリスクを十分に説明しなかったことが明らかになったのである。

 その後も、投資用不動産会社不動産の「TATERU」や「わひこ」などで同様の不正が発覚した。ここ数年、全国の消費生活センターにサブリースに関するトラブルの相談件数が増加したため、監督官庁の国交省も看過できず規制法作成に乗り出したわけだ。

業界健全化のためのサブリース規制法だが・・・

 規制法では、サブリース業者に対して不当な勧誘や誇大広告の禁止、リスクなど重大事項の説明を義務付けている。

 現在、サブリース業者の中には「頭金0円の安全資産作り」などと謳っている企業もある。が、実際には頭金0円でアパートを建設するのは極めて難しく、今後はこうしたセールストークも“誇大広告”と判断される恐れがある。

 さらにいまだに、多くのサブリース業者が数十年間の“家賃保証”を掲げている。しかし、家賃には変動リスクがあり、家賃の値下げで収入が激減して銀行への返済に苦心するオーナーも少なくないのが実態だ。

 オーナーとの間でトラブルになると、サブリース業者はたいてい「家賃の見直しは契約書に明記されている」と主張してきた。しかしこちらも、規制法施行後に業者とオーナーの意見が対立した場合は「リスクの説明が不十分」として、業者の瑕疵を断罪される可能性が高い。

 規制法に違反すると、一年以下の懲役又は100万円以下の罰金。若しくは併科されるほか、業者には業務停止処分という厳罰が待ち構えている。規制法案は、来夏までには施行される見通しだ。