トランプ大統領と習近平主席。昨年6月、G20大阪サミットに合わせて開かれた米中首脳会談の際のツーショット(写真:ロイター/アフロ)

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 緊急事態宣言が日本全国で解除され、6月19日にはようやく県境をまたぐ移動も全国で可能となりました。これからは徐々に経済活動、社会活動が平常化していくと思いますが、まだ第2波への懸念も残っていますので、注意深く生活していく状況が続くことになるでしょう。これからは「ウィズコロナ」の意識が私たちの常識になりそうです。

戦争と恐慌の悪いところどり

 さて、今回のコロナを「ウイルスとの戦争だ」という人がいます。あるいは、コロナによる景気の大減速を「大恐慌並みになる」という人もいます。しかし私に言わせれば、その認識はまだ甘い。今回のコロナによるインパクトは戦争と大恐慌の「悪いとこ取り」のようなものだと言えます。

 戦争と大恐慌の「悪いとこ取り」とはどういうことでしょうか。

 戦争が激しくなると、通常は国民の行動は自粛を求められることになります。これは今回のコロナで各国が行った外出制限のようなものです。戦争が激しくなればなるほど危険が伴ったり、遊興にふけることを咎める雰囲気になったりするので、国民の社会活動や経済活動に制限がかけられます。もちろんこれは、経済的に大きなデメリットになります。

 ただその一方で、不謹慎かもしれませんが、戦争は、一種の公共事業的側面もあり、色々な業種に特需が起きます。自国が戦争当事者ではない場合などが典型ですが、プラスマイナスで見れば、戦争が起きればトータル的に見れば景気が良くなる面があるのも事実なのです。

 次に大恐慌についてですが、言葉の定義どおり、当然景気は悪くなります。ただし景気が悪いので、じっとしていたら食べられなくなるということで、人々はより一層積極的に働きに出たり、失業している人も必死になって職探しをしたりということで、経済活動は停滞しても、運動量・社会活動は活発になります。

 しかし今回のコロナはどうでしょう。戦時のように活動は制限されましたが、それに伴う特需などは、ごく一部のIT関連業界などを除き、さほど起きていません。そして大恐慌に匹敵するほどの景気悪化がやってきそうですが、感染リスクと隣り合わせの中、人々は外に出て働いたり職探しをしたりがしづらい状況でもあります。つまり、戦争と大恐慌の悪いところが重なって起きた様なものなのです。

 しかも過去に世界を襲った感染症の時に比べて、今回はグローバル化の進展の度合いが違います。一国で広がった感染が、第2波、第3波として世界に拡散していきかねませんし、経済的ダメージもいわゆるサプライチェーンの寸断など、海を越えて波及していきます。私たちは、いままさにこの難しい状況の真っただ中にいるのです。