(英エコノミスト誌 2020年6月20日号)

気候変動対策に1兆円の基金を立ち上げたジェフ・ベゾス氏(2018年撮影、写真:AP/アフロ)

オンラインでモノを買う世界というジェフ・ベゾス氏のビジョンは、ますます速いペースで実現しつつある。しかし、アマゾンという企業の経営はいっこうに容易になっていない。

 1995年の夏。凝り性で痩せぎすなジェフ・ベゾス氏は、妻と地下室にこもって働いていた。発送するペーパーバックを箱に詰める作業だ。

 それから25年経った今、ベゾス氏は21世紀で最も重要な大物経営者かもしれない。

 筋肉隆々になり離婚も経験した同氏は、娯楽のつもりで宇宙旅行と新聞発行の事業に資金を投じ、投資家のウォーレン・バフェット氏にお世辞を言われる一方でドナルド・トランプ大統領からは罵声を浴びている。

 ベゾス氏が経営するアマゾン・ドット・コムは、もう単なる書籍販売会社ではない。

 消費者からは愛されるが政治家からは憎まれ、投資家やライバル企業からは一目も二目も置かれる時価総額1兆3000億ドルのデジタル・コングロマリット(複合企業)だ。

 おまけに最近では、新型コロナウイルスのパンデミックのせいで「デジタル需要」が急増し、欧米での日常生活にとってアマゾンがいかに重要であるかが浮き彫りにされている。

 電子商取引、物流、クラウド・コンピューティングという3つの分野で欠くことのできない役目を担っているのがその理由だ。

 今回の危機に際し、ベゾス氏は夢中になっている娯楽を中断して本業の経営に回帰している。

 その本業は、表面的にはこれ以上望めないほど好調だが、時価総額世界第4位のアマゾンにも問題は存在する。