連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第3回。新型コロナウイルス感染症重症患者の多くの命を救ったECMO。だが、「よかっただけではすまない」と讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)は警鐘を鳴らす。一般にはほとんど知られていないECMOの怖さとは。

肺の機能を肩代わりするECMO

 エクモ――ECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)。

 緊急事態宣言が解除された現在(6月3日)もなお、私の勤める自治医科大学附属さいたま医療センターのICUでは、2名の患者がECMOを使いながら新型コロナウイルス感染症と戦っています。この感染症の特徴のひとつは、重症になると長期戦になってしまうことにあるのです。最近ECMOから離脱した患者は、30日以上もECMOを回さなければなりませんでした。

ECMOを離脱した患者の『ICUダイアリー』(ICU日記)に励ましのメッセージを送る。
ICUダイアリーとは、患者がICUで闘病中に、医療スタッフや家族がつける日記のこと。退院後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を予防するために行う。
ICUで闘病し生還した患者の25%程度にPSTD(例えば、心電図の音を聞いただけで、恐怖を感じてドキドキ、ハーハーしてしまう、いわゆるフラッシュバック体験が起こる疾患)が発症すると言われる。ICU滞在中の記憶が、断片的な、ゆがんだ恐怖体験として、退院後も頭から離れなくなることが原因。
患者が生還後、ICU日記を読むことで事実(=なぜ、どのような治療が行われたか)を受け入れ、断片的なゆがんだ記憶が修正され、PTSDが軽減される

 ECMOは新型コロナ感染症で生死の境をさまようほど重症化した患者の多くの命を救ってきました。テレビや新聞・雑誌でも、「最後の切り札」といった形で取り上げられることが多いようです。しかし、まだ一般にはほとんど知られていない怖さがECMOにはあります。