(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年6月5日付)

ドナルド・トランプ氏が大統領の椅子にこだわるのは米国のためではない

「It Can’t Happen Here(それはここでは起こりえない)」とは、1930年代に米国について書かれた小説のタイトルだ。

 確かにファシズムは米国に上陸しなかったし、今後も上陸しそうにない。

 しかし、米国の都市に戒厳令が敷かれたり、軍事化に近い状態になったりすることは、あるかもしれない。

 首都ワシントンの住民たちはここ数日間の経験によって、低空飛行するヘリコプターや砂色に塗られた軍用車両、夜間外出禁止令、軍の指揮下にある制服姿の男たちなどを珍しいとは思わなくなっている。

 もしこうした光景が香港で展開されていたら、ワシントンにあるシンクタンクは一つ残らず、緊急オンラインセミナーの予定を組んでいるだろう。

 だが実際には、人々はあまりの物珍しさに呆然としてしまい、リスクを推し量れなくなっている。

 11月にドナルド・トランプ大統領が再選される可能性はあまり高くない。そして、米国の危機の源はまさにそこにある。