5月10日、大統領就任3年目を迎え、特別演説を行う文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 日韓関係が再び破局に向かって走り出した。韓国の裁判所が、日本企業に対する徴用工賠償訴訟に関連し、日本製鉄の韓国内資産の売却のための手続きを再開したのだ。

日本企業の資産を現金化へ

 韓国メディアによると、6月1日大邱地裁浦項支部は、日本製鉄に韓国人強制徴用被害者賠償のための資産差し押さえ書類などを公示送達を決めた。公示送達とは、相手に書類が届かなかった際、裁判所の職権で一定期間が過ぎれば、相手側に書類が渡されたものと見なし、訴訟を再開させる方法だ。

 韓国最高裁は2018年、イ・チュンシクさん(96)ら元徴用工6人が新日鉄住金(現・日本製鉄)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、原告勝訴の判決を下した。日本製鉄に対し、原告側に一人あたり1億ウォン(約760万円)の賠償を命じる判決だった。

 その後、原告側は、日本製鉄が賠償に応じないとし、財産を差し押さえて現金化してほしいという申請を大邱地裁浦項支部に提出した。これを受け、韓国裁判所は2019年の1月に日本製鉄が韓国大手のPOSCO(ポスコ)と共同設立した合弁会社の(株)PNRの株式19万4794株などを差し押さえ、関連書類を日本に送達した。

 しかし、送達された書類は、日本外務省によって5カ月後に韓国へ返送され、韓国では日本で遅延戦術を使っているという批判が起こった。差し押さえ決定文が企業に渡されてからこそ資産売却の手続きを進められるゆえに、日本外務省が書類伝達を妨害しているという指摘だった。