(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年5月29日付)

新型コロナウイルス感染症とそれに伴う景気悪化のさなかにEUとの離婚交渉に臨む英国には、いまや水先案内人が見当たらない

 なぜ欧州の人間はあんなに不愉快な態度をとるのか。どうして英国の望むブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)後の貿易協定に同意しようとしないのか。

 さらに悪いことに、ボリス・ジョンソン首相の提案に署名すればEUの利益になるということを、なぜEU本部は理解できないのか。

 首相が飽きずに何度も言うように、英国はドイツの車もイタリアのプロセッコ(発泡白ワイン)もフランスのチーズもたんまり買っているのだから。

 英国政府は四方から批判されている。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」への対応はめちゃくちゃで、死亡率は裕福な国々では最も高い部類に入る。経済は深刻な景気後退に陥った。

 首相側近のドミニク・カミングス上級顧問がロックダウン(都市封鎖)のルールを破って長距離の移動をしたことで、政府に対する一般市民の信頼もがた落ちだ。

 ジョンソン氏は保守党内からも反発を受け、途方に暮れているように見える。

 それでも、気にすることはない。国内でどんな問題が生じようとも、首相はEU本部から「主導権を取り戻す」――。

 ただし、問題が1つある。