米ミシガン州デトロイトで、ミネアポリスの警察がジョージ・フロイド氏を拘束して死亡させた事件に抗議するデモ隊(2020年6月1日、写真:ロイター/アフロ)

(岩田 太郎:在米ジャーナリスト)

 米中西部ミネソタ州のミネアポリス市で5月25日、白人警官のデレク・ショービン容疑者(44)が、偽造の20ドル札(約2200円)使用の疑いで、2児の父親である黒人男性ジョージ・フロイド氏(享年46)を拘束した。その際に、フロイド氏は約9分間にわたり首を膝で地面に押さえつけられ、死亡した。彼は、首を圧迫される中で、「お巡りさん、息ができない」と訴えている。

フロイド氏の頸部を圧迫する白人警官のショービン容疑者(2020年5月25日)。ネット上の動画より

 この様子を記録した動画がネット上に拡散したことで同市をはじめ全米各地では憤った黒人を中心に抗議の蜂起が発生し、一部では放火や略奪などが続いている。これにあわてた地元捜査当局は5月29日になってやっと、免職となったショービン容疑者を逮捕した。地元ヘネピン郡のフリーマン検事は、「捜査は通常9カ月から1年かかるため、今回の逮捕は異例の速さである」と強調した。しかし、怒りのデモは収まっていない。

 なぜなら、動画が公開された当初から、ショービン容疑者が丸腰で無抵抗のフロイド氏に対する殺人を意図したことは誰の目にも明らかであり、米保守派サイトの「ナショナル・レビュー」でさえ、「制圧の理由はフロイド氏の逃亡の恐れでも抵抗でもなかった。ただ殺すために首を圧迫した警官の逮捕に、なぜここまで時間がかかったのか」とする記事を掲載している。

 フロイド氏が死の前に残した言葉「息ができない」は、米国黒人にとってあまりにも身近で切実な訴えだ。6人の子供の父親で、丸腰のエリック・ガーナー氏(享年43)は2014年7月17日に、白人警官ダニエル・パンタレオ氏(事件当時29)らに脱税たばこの販売を疑われ、その事実がなかったにもかかわらず締め上げられ、死亡した。ガーナー氏もまた、「息ができない、息ができない、息ができない」と繰り返し訴えている動画が残されている(次ページの写真)。