(英エコノミスト誌 2020年5月30日号)

死者数が10万人を突破したとはいえ、実は、米国の新型コロナウイルス感染症に対する対応が欧州に比べて酷いとはいえない

多くの米国民の認識とは異なり、死亡率は欧州とほぼ同水準にとどまっている。

 米国の数字が恐ろしい水準に達してしまった。半年前に地球半周分も離れた土地から広がり始めた新型コロナウイルス感染症「COVID-19」による死者が、10万人の大台に乗ったのだ。

 多くの米国民は、感染症への大統領の対応がずさんだ、米国は特異なほどひどい打撃を受けている、両者の間には単純な因果関係があると考えている。

 この10万人という数字は、COVID-19以外の死因に誤って分類された「超過死亡」を含んでいないが、それでも世界のどの国の死者数をも上回る。

 最近では、ベトナム戦争における米国民の犠牲者数(6万人)と比較されるのが通例になっている。

 ニューヨークのタイムズスクエアに設置された「トランプ死の時計」は、大統領の不手際によって何人の命が犠牲になったかを示しているとされ、本誌エコノミストが印刷に回される段階でその数は6万262人に達していた。

 しかし、米国が対応に失敗したのはドナルド・トランプ大統領のせいだという説は、広く信じられているが、数字による裏づけがない。少なくとも、今のところはそうだ。

 米国が公式に発表している死亡率は、欧州連合(EU)のそれとほぼ同じだ。

 EUでも超過死亡は発生しているが、米国とは違って国民皆保険の制度があり、指導者も米国ほど風変わりではない。

 総じて言えば、米国の状況はスイスより少し悪く、オランダより少し良い(どちらも新型コロナウイルスの対応に失敗した国家ではない)。