法案の作成に香港は口を出すことができず、成立すれば中国が秘密警察を香港に駐留させることも可能になる。

 その意味するところは明白だ。恐怖による支配が始まろうとしているのだ。

 これは「一国二制度」の原則に反する、これまでで最も甚だしい事態だ。

 英国の植民地だった香港が1997年に中国に返還される時、中国は、香港が公平な裁判や言論の自由を含む「高度な自治」を享受することに同意した。

 香港人の多くは怒り心頭に発している。投資家の中には怖がっている向きもある。香港の株価は5月22日だけで5.6%安くなり、5年ぶりの大幅下落となった。

 この都市が世界の商業の中心地であるのは、中国本土に隣接していることに加え、法の支配を享受しているからだ。ここでは、商事紛争が生じても、事前に明らかにされているルールによって公平に調停される。

 もし中国の、説明責任を負わない法執行者が中国共産党の気まぐれを自由に押し通すことができるようになったら、グローバルな企業が事業を営む場所としての香港の魅力は低下する。

 中国の今回の動きがもたらす影響は香港だけにとどまらない。

「一国二制度」は、中国が自国の領土だと見なしている人口2400万人の民主主義の島、台湾にとってモデルになるはずだった。本土との再統一は台湾が自由を失うことを必ずしも意味しない、と示すためだった。