集会や移動の自粛ムードの中、一周忌や七回忌などの回忌法要をすることが憚られる風潮が広がっている(写真:AP/アフロ)

(鵜飼 秀徳:ジャーナリスト、一般社団法人良いお寺研究会代表理事)

急速に広がり始めた「オンライン法要」

 今年の流行語大賞の選考は大変な作業になるだろう。「ステイホーム」「アベノマスク」「8割おじさん」「3密」「Zoom飲み会」・・・。新型コロナウイルス蔓延に関する新語は下半期にかけて、まだまだ出てくるはずだ。

 私は仏教界に身を置いているが、この業界における2020年上半期の流行語を決めるとするなら、きっと「オンライン法要」になるだろう。オンライン法要とは、Zoomなどのオンライン会議アプリを使って法要を中継することである。集会や移動の自粛ムードの中、一周忌や七回忌などの回忌法要をすることが憚られる風潮が広がっている。そのため、リモートで法要に参加してもらうオンライン法要が、お寺の世界で急激に広がりを見せているのだ。

 このオンライン法要の是非の議論を含め、仏教界の最新状況と未来について先日21日、Zoomを使ったパネルディスカッション(ウェビナー)が行われた。

 題して、「Zoom夏安居 どうなる⁉︎ どうする? これからの寺院 ~コロナ感染症の流行を視座として~」。「夏安居(げあんご)」とは、お釈迦様の時代、夏場に虫が這い出てそれを踏みつぶさない不殺生戒を実践するために、外出せず寺に籠もって修行に専念したことに由来する。夏安居を、昨今の「ステイホーム」の状況に重ね合わせた。

 パネリストは私と、行政書士で『いいお坊さん、ひどいお坊さん』(2011年、ベスト新書)の著者としても知られる勝桂子さん。司会進行役は浄土宗僧侶で、東日本大震災などの被災地支援などにも関わっている玄向寺(長野県松本市)副住職の荻須真尚さんがつとめた。

 なお、仏教界が社会の動きを過敏に察知し、デジタルツールを率先して取り入れた事例はあまりない。なぜなら、仏教界では概して、「書簡」「ファクス」といった前々時代的な手段によるやりとりが、今でも続いているからだ。メディアに従事したことのある人は、寺に取材申請しても「メールのやり方が分かりません。書簡でください。お急ぎならファクスで」などと返されたケースは少なくないのではないか。

 勝さんはまず、海外の宗教団体がオンライン儀式に切り替えたという事例を紹介した。およそ2か月にわたって外出禁止令が出ていたフランスでは、カトリックの教会のミサに行けない状況になっていた。そこで政府の方針のもと、政府と教会はオンラインミサへの切り替えを進めた。イスラム教でもインターネット上にモスクを開設している事例があるという。

 勝さんは、日本の寺院の住職にもオンライン法要を提案したところ、「法事は、お寺で目と目を向き合わせてこそ。オンラインでは意味がない」などと逆に諭されることが多かったエピソードを紹介した。世界の宗教がオンラインを活発に利用しようとしている中、日本の仏教界は概して動きが鈍いようだ。

 一方で、オンライン法要に積極的に取り組む僧侶が現れているのも確かだ。