週刊文春が黒川氏の疑惑を報じた5月20日、衆議院内閣委員会では野党議員が当該記事のコピーを手にしていた(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 東京高検の黒川弘務検事長が、産経新聞記者や朝日新聞社員と外出自粛期間中に賭け麻雀をしていたという週刊文春の報道を受けて、5月21日に辞任した。報道内容を認めたということで、森雅子法務大臣は黒川氏を訓告処分にし、黒川氏は辞表を提出した。この事件の背後には、政権内部の主導権争い、検察や法務省内部の権力闘争、マスコミと権力の癒着など様々な問題があるだろう。

 SNS上では、芸能人など著名人が反対の声を上げ、「#検察庁法改正案に抗議します」に賛同する人の数が900万人を超えたと言われている。この現象に対しては、自粛ムードでSNSの活用が拡大したからとか、自粛ストレスの解消のための八つ当たりだとかいう意見もあるが、あながちそれだけではあるまい。

SNSでの反発を甘く見た政府

 この問題は、森友・加計問題、桜を見る会などの問題が曖昧に処理されてきたことの延長線上にあると、多くの人が位置づけたようである。しかし、少なくとも表面上は、SNSなどは懸念するに及ばないという姿勢を政府与党は維持してきた。

 問題なのは、このようにSNSで反対論が拡大すると、スキャンダルをリークしようとする者が増えることである。黒川氏が「接待麻雀の常習犯」だったとか、産経新聞社のハイヤーを使ったとかいう話は、情報通報者がいないかぎり分からない話である。記事によれば情報は「産経新聞関係者」からもたらされたという。義憤にかられたのか、金銭的対価を得るためか、いずれにしても身内が絡んだ情報を週刊誌側に“売る”者も、SNSの合唱が背景にあれば、罪悪感を持たなくなる。

 そして、黒川氏がSNSで脚光を浴びれば浴びるほど、彼に関する情報の価値が高まる。情報を売るほうは、より“高く”売ることができる。首相官邸は、このようなSNSの政治的効果を過小評価していたとしか言いようがない。