新型コロナウイルスと資産運用

 日本を含む東アジアでは、新型コロナウイルスの感染は一段落したように見えますが、「第2波」がやってくる可能性はいまだ捨てきれません。株式や投資信託で資産運用をしている方は、今後どのような行動を取ればよいのでしょうか? 投資信託を運用する資産運用会社、ニッセイアセットマネジメントの広岡洋一さんにお話をうかがいました。

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広岡 洋一さん

ニッセイアセットマネジメント
投資信託営業部 営業部長 兼 投資信託クライアントサービス室 室長
広岡 洋一さん
1997年、大和証券入社。2001年にニッセイアセットマネジメント入社以来、一貫して投資信託ビジネスに従事。金融機関向け営業からイベントの企画・立案、セミナー講師、資料・レポートの作成など幅広い分野で活躍。日本証券アナリスト協会検定会員。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

ニュースや市場の動向に一喜一憂しない

Q.「解約が増えている」「むしろ資金流入が増えている」など、今回の調整局面で貴社ファンドはどのような影響を受けていますか?

 株式市場をはじめ、今回のように相場が大きく変動している状況においては、市場の動向を見極めたいとの思いから、買い控えされる個人投資家の方はいらっしゃいます。また、将来の値上がりを期待して価格が下がったタイミングで購入される方も多いようです。

 一方で、価格が下がったからといって、あわててファンドを解約する個人投資家の方は、リーマン・ショックの時と比べて減っている印象です

 こうしたことから、弊社の公募投資信託全体では資金流入の傾向にあります。

Q. 販売会社や個人投資家から増えている質問はありますか?

 大きく分けて2種類の問い合わせが多くなっています。

 1つは「今が買い時なのか?」「ニッセイアセットの見通しはどうか?」といった購入を前提とした前向きな質問。もう1つは「もう諦めて売却した方が良いか?」「基準価額や分配金がゼロになることはあるのか?」といった売却を前提とした質問です。

 コロナ・ショックに対する投資家の捉え方はさまざまですが、この差の背景の一つとして考えられるのは「リーマン・ショックを経験しているかどうか」という点です。

 本格的な景気後退や相場の急落を未経験の投資家の中には、あまりの下落ペースの速さにどうしてよいのかわからず、ただただ狼狽えるばかり、といった方もいらっしゃるようです。一方で、リーマン・ショックを経験している投資家は「時間がかかっても持っていれば回復した」「最悪期に投資をしておけば良かった」といった経験をされており、今回の相場の急落に冷静に対応できている方が多い印象です。

Q. こうした局面で個人投資家がやってしまいがちなミスや、やってはいけない行動には何がありますか?

 個人投資家の中には「損をしたくない」という想いが強すぎるために、損切り(損失を抱えている状態で保有している運用商品を売却して損失を確定させること)ができない方も多いようです。また、今回のような相場の急落局面ではあまりの下落幅に耐えられず、下がりきったところで我慢しきれずに損切りしてしまうケースもあるようです。

 新規の投資やナンピン買い(保有している運用商品の価格が下がったときに、さらに買い増しをして平均購入単価を下げること)などを検討するといった、冷静な判断が出来なくなってしまうのですね。

 売買のタイミングはプロでも難しいものですが、日々のニュースや市場の動向に流されて一喜一憂するのではなく、「〇%下落したら損切りする」など、ご自身のルールを決めて投資するのも一つの考え方ではないでしょうか