航空自衛隊の「F-2」戦闘機(出所:航空自衛隊ホームページ

(数多 久遠:小説家・軍事評論家)

 4月1日に防衛省の外局、防衛装備庁に「F-2」後継となる次期戦闘機担当の装備開発官が置かれると同時に、次期戦闘機開発を“我が国主導”で進める方針が定まりました。

 それを受けて報道も活発化していますが、それらの報道には、“我が国主導”による次期戦闘機開発の実現に疑問を呈する論調が少なからず見られます。

 しかしながら、防衛省には、誰が見ても極めて困難な“我が国主導”という方針を打ち出さなければならない理由があります。同時に、開発が容易な訓練機を改造した軽戦闘機ではなく、開発が困難な大型で高機能の新型戦闘機を目指さなければならない理由があります。

 以下では、そうした防衛省の事情を踏まえて、今後のF-2後継機開発の展望を述べてみたいと思います。

なぜ“我が国主導”を打ち出す必要があるのか

 防衛省は、国内での開発能力を維持する分野を絞り、その分野にリソースを集中する方針を打ち出しています。何を切り捨て、何を維持するのかは明示されていませんが、維持する分野の中に“戦闘機を含めた航空機開発能力”があることは間違いありません。

 F-2後継は、その方針の下、“我が国主導”で開発を進めることになりました。ところが、F-35の開発に、アメリカだけでなく多数の国がパートナーとして参加しているように、財政的な理由で、もはや1国で戦闘機を開発することは不可能になりつつあります。

 そのような情勢の元、経験が乏しい我が国(政府+業界)が“我が国主導”で国際共同開発を進めることは、無理なのではないか? それが、複数の識者が、“我が国主導”に異論を唱える理由です。

 正直言って、私も無理じゃないかと思います。ですが、防衛省は“我が国主導”の方針を強く打ち出していますし、私もその方針を支持します。

 なぜかと言えば、少なくとも今の段階でこう言っておかないと、アメリカと日本の財務省に、それぞれにとって都合の良いものを買わされるだけとなるからです。そしてそれは、日本の航空機開発能力が骨抜きになるのみならず、日本の防衛力の低下を招くからです。