(英エコノミスト誌 2020年5月16日号)

パンデミックが発生する前から、グローバル化は困難に陥っていた。
世界経済を数十年にわたって牛耳ってきた開かれた貿易システムは、世界金融危機と米中貿易戦争で打撃を被っていた。
そこに襲いかかってきたのが、ロックダウンによる国境閉鎖と商業活動の中断だった。
ボクシングにたとえるなら、グローバル化はここ12年で3発目のボディブローをくらってよろめいている最中だ。
ロンドン・ヒースロー空港の利用者数は前年比で97%減り、メキシコの4月の自動車輸出は90%減少した。5月に太平洋を横断するコンテナ輸送も、21%がキャンセルされている。
経済の再開につれて活動は回復に向かうだろうが、ヒトもモノも自由に移動できる、気苦労のない世界にすぐに戻れると期待してはいけない。
今後はパンデミックのせいで移動や移住が政治化され、自給自足を偏重する傾向が強まる。
この内向き志向の急激な盛り上がりは、景気回復の勢いを弱め、経済を脆弱にし、地政学的な不安定性を世界に広めるだろう。
世界は統合の時代を何度か経験してきたが、1990年代に始まった貿易システムの統合はかつてないほど深く進展した。中国が世界の工場になり、国境はヒト・モノ・カネに加えて情報にも開かれた。