1990年にイギリスの高級ブランド「アクアスキュータム」を買収したレナウンだったが、それにより業績を引き上げることは出来なかった(写真:ZUMAPRESS/アフロ)

(黒木 亮:作家)

 かつてアパレル業界の“王者”として自他ともに認めたレナウンの民事再生適用申請が、15日、東京地裁に受理された。新型コロナ禍による外出自粛と衣料品販売の激減は、体力の弱まった企業から倒れていくサバイバルゲームをもたらし、筆者が住む英国では、柔らかな植物模様の衣料品で世界的に有名なローラ・アシュレイが3月に破綻した。

アパレル業界でぶっちぎりの首位

 レナウンは明治35年(1902年)、創業者の佐々木八十八によって「佐々木営業部」として大阪で設立され、繊維製品の卸売業やメリヤス(ニット製品)の製造を手がけた。

 第二次大戦中、国策による企業整理で江商(現・兼松)に吸収合併される苦難期もあったが、戦後、いち早く東京に本社を開設して復活。メリヤス、肌着、靴下、セーターなどの販売を手始めに、衣服の洋装化の波に乗って急成長し、瞬く間に日本最大のアパレル・メーカーになった。2016年下半期に放送されたNHKの朝ドラ『べっぴんさん』に登場するオライオンという衣料品メーカーのモデルでもある。

 戦後の同社の歴史は、栄光に満ちていた。高度経済成長真っただ中の1961年には、小林亜星が作詞・作曲したCMソング『ワンサカ娘』で一世を風靡。1969年には、空前のゴルフブームを背景に、米国の著名ゴルファーの名前を冠し、赤黄白緑の四色の傘をマークにしたトータルファミリーブランド「アーノルドパーマー」で戦後最大と言われるヒットを飛ばした。さらに1971年には、紳士服のブランド「ダーバン」をアラン・ドロンのCMによって売り出し、樫山と大賀を抜き去って、背広市場で首位に躍り出た。