(英エコノミスト誌 2020年5月9日号)

新型コロナウイルス感染症による消費低迷で破産した米国のニーマン・マーカス(ニュージャージー州のモール店舗、5月7日、写真:AP/アフロ)

米国を形作ったのは例のウイルスに脅かされている豪華な小売店舗だった。

 現代の危機のほぼすべてにおいて、米国は商人のリーダーシップを頼りにしてきた。

 第1次世界大戦が始まった1914年には、その当時最も偉大な小売業経営者だったジョン・ワナメイカーがベルギーに2000トンの食料支援を行い、和平のためにあの小さな国を(侵攻・占領したドイツから)米国が買い取ってはどうかと提案してニュースになった。

 1942年には、ワナメイカーの店とニューヨークでしのぎを削っていた百貨店のメイシーズが、毎年恒例のサンクスギビング(感謝祭)パレードを中止して、風船に使う予定だった650ポンドのゴムを戦争のために寄付すると発表し、「私たちも協力した!」と胸を張った。

 米国の商業の殿堂である百貨店は、戦時公債を華麗に売りさばいてくれる頼れる存在でもあった。

 アイオワ州デモインのヤンカースの店舗では、アドルフ・ヒトラー用だという棺桶を天井に吊し、戦時公債が売れるたびにそれを機械仕かけで床まで下ろす演出が施された。

 自己宣伝の達人だった偉大な小売業者たちは、愛国心と結びつくことで苦境に陥ることはなかった。一般の米国人は小売業者のご都合主義を嘆くどころか、業者がそのご都合主義で促進しようとしていた消費に飛びついた。

 大恐慌の際には、小売業者の「今こそ買おう!」キャンペーンに馳せ参じた。

 買い物は景気を浮揚させる最も確実な方法であるだけでなく、都市生活者の最大のコミュニティー活動でもあった。

 近いところでは2001年9月にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が、テロなどものともせずに買い物に出かけようと国民に呼びかけ、この二重の事実を示唆した。