5月2日、肥料工場を視察するために姿を現した金正恩委員長(写真:AP/アフロ)

 雲隠れしていた北朝鮮の金正恩委員長は5月1日、元気な姿で、「順川(スンチョン)燐酸肥料工場(北朝鮮での呼称)」の竣工式に現れた。

 重篤説・死亡説の後の金正恩の出現だったので、このことに焦点が当てられ、我々はこれらのニュースに踊らされたが、実際は、別のことに重大な問題が隠されていたことが分かった。

 金正恩氏は、4月12日の最高人民会議や4月15日の金日成元主席が眠る太陽宮殿参拝を欠席しても、順川の化学肥料工場の竣工式に出席した。

 太陽宮殿参拝を欠席しても、この工場の竣工式に出席したい極めて重大な理由があったはずだ。

 長く不在していたにもかかわらず、なぜ、このタイミングで竣工式に現れたのか。

 この工場は、化学工業部門のモデルで、新しい化学工業の拠点として完成した。表向きは、今も欠乏している食料を確保するため、化学肥料を使用してそれを解決するためのものということだ。

 金正恩氏は今年最初に視察したのが、建設中であった順川のこの施設であった。

 その際、「2020年に完成すべき党の最も重要なプロジェクトである」ことを強調していたので、新型コロナウイルス感染症が恐ろしくて、竣工式に欠席するというわけにはいかなかった。

 順川のこの施設は、本当に肥料製造工場なのかと、首をかしげたくなるほど特異なことが多い。

 いくつかの軍の司令部、大講堂、研究施設らしい施設があることからも、燐酸肥料を製造することが主な目的ではないようだ。