5月4日、緊急事態宣言の延長を発表した安倍晋三首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、当初は5月6日までとしていた緊急事態宣言であるが、安倍晋三首相は、専門家会議に諮問して、5月4日に全国を対象に5月末まで延長することを決めた。実は、安倍首相は5月1日に、早々と1カ月の延長を発表したが、それは誰のアドバイスに依拠したものなのか。専門家会議の意見も聞かなかったのなら、それも困るし、逆に専門家会議、それも一部のメンバーの見解だけに耳を傾けたのなら、それはそれで問題である。

 長期政権の弊害か、政策決定過程が極めて不透明になっている。アベノマスクやアベノコラボなどでも指摘されてきたが、官邸官僚の意見しか採用しなくなったのか。国会や党という機関の存在意義がなくなるような大統領的首相になっている。

感染者数減少でも緊急事態宣言延長

 4日の会見で驚いたのは、緊急事態宣言延期の最大の理由が、感染者増ではなく、医療提供体制の逼迫状態になってしまったことである。実は、同日に行われた専門家会議の説明でも、感染者数は減少しており、しかも、実効再生産数が、4月1日には1.0を下回っており、4月10日には、全国で0.7、東京で0.5まで低下しているという。

 海外では、実効再生産数が1.0を切ることを都市封鎖解除の基準としており、その論理でいくと、4月7日の緊急事態宣言そのものが必要だったのかという疑問すら呈したくなる。

 さらに、13の特定警戒都道府県とそれ以外を同列に緊急事態宣言の対象とするというのも、大きな問題である。ただ、自粛度合いは13の特定警戒都道府県とその他の地域とは対応を分けるという。宣言を発するときに、そもそも、感染者が数千人に上る東京都とゼロの岩手県を同列に扱ったことに問題はなかったのか。