新型コロナの感染拡大によって、テレワークが一般化しつつある。必然的に、新幹線や航空機などの需要は減退する(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)に集う専門家が、この国のあるべき未来図を論じる。1回目は理事長の森田朗氏。(JBpress)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。1カ月前の3月中旬に700人台だったわが国の感染者数は1万人を突破、さらなる増加が懸念される。 

 4月7日、7都府県に緊急事態宣言が発出され、16日には全国47都道府県が対象となった。東京をはじめとする大都市圏では外出自粛が強く求められているが、15日間で感染者を減少させるために必要な80%の接触削減を達成することは容易ではない。発生する患者に必要な医療が提供できなくなる“医療崩壊”の恐怖が現実化しつつある。

コロナによって打ち破られるタブー

 こうした事態に、これまでのタブーを破り、個人情報である携帯電話の位置情報を使った感染者の追跡や接触密度の把握が始まりつつある。また、充分な接触削減が達成されなかった場合、さらなる外出抑制や店舗の休業推進のために、政府は、現在の「強い要請」を超えた、強制による私権の制限を含む緊急立法も視野に入れ始めているという。

 コロナウイルス感染症は、社会のあり方を大きく変えつつある。今起こっている事態に対して、これまで築き上げてきたさまざまな制度の枠内では対応できず、新たな状況に対処すべくさまざまな緊急措置が連発されている。

 わが国では、2011年の東日本大震災で、福島原発の事故を含め、それまで経験したことのなかった未曾有の状況に遭遇した。このときも数々の新しい政策や制度が作られたが、今回のパンデミックは、全世界に感染が広がるという、そしていつまで続くかわからないという、それを上回る変化を社会にもたらしている。

 このパンデミック危機以前にも、わが国では、21世紀に入って以降、かつての高度経済成長を支えてきた基盤制度が、次第に機能不全に陥り、“制度疲労”が見られるようになっていた。

 人口減少、少子高齢化によって、それまでの右肩上がりを前提とした社会はもはや成り立たない。空き家問題に見られるように、以前は資産として重視された不動産も地方では急速にその価値を失いつつあり、所有権制度も見直しを求められている。

 他方、情報技術の進歩は著しい。前述のように、携帯電話の位置情報の活用が、コロナ対策の有効な手段として、世界の多くの国で進められつつある。それ以外にも、品薄となり買い占め騒ぎが起こりかねないマスクを公平に配給するために国民IDを使う仕組みなど、これまで構想としてはあっても実現されなかった情報技術の利用を急速に進めている国もある。

 そのような世界の動きに対して、わが国では、過度の個人情報の保護意識や政府の監視に対する不信感などから、すでに保有されているデータの活用も進まず、相変わらず旧来の紙とハンコの方式にしがみついている。コロナ感染症による収入減少に対する給付金の支給にしても、今のやり方では、不正を防ごうとすれば手続が複雑になり時間もかかる。迅速な給付をめざそうとすれば、不正を防げない。結局、10万円を一律給付するようになったが、本来ならせっかく作ったマイナンバー制度の活用を推進すれば、初めからもっと簡素なやり方ができたはずだ。