(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年4月18/19日付)

パンデミックが起きると必ず生まれるのが陰謀説だ。

 パンデミックには陰謀論の発生がつきものだ。

 どれを信じるかによって、新型コロナウイルスは中国か、ビッグ・ファーマと称される巨大製薬会社か、あるいは米国の科学者によって生み出された生物兵器になる。

 大規模感染は第5世代移動体通信システム(5G)の技術が引き起こしたものにもなるし、新型コロナなんて本当は存在しない、ドナルド・トランプ米大統領の政敵による「でっち上げ」でしかない、とされることもある。

 陰謀論者はまた、将来作られる「ワクチン」はいずれも、政府が住民を隷属させる仕掛けになると警鐘を鳴らしている。

 こうした誤った考え方は、非常に深刻な結果をもたらす。

 今回のパンデミックをワクチンで終わらせることがますます難しくなるうえに、政治をさらなる機能不全に陥らせるリスクをもはらんでいるからだ。

 パンデミックと陰謀論の現代的なケーススタディーは、エイズ(後天性免疫不全症候群)だ。

 1983年にインドの小さな新聞パトリオット紙が、「エイズがインドを侵略する可能性:米国の実験で発生した謎の病」と題された匿名の手紙を公表した。

「米国の著名な科学者・人類学者」が書いたという触れ込みで、エイズはメリーランド州フォート・ディートリックにある陸軍の研究施設で「ペンタゴン(米国防総省)が行った生物兵器の開発実験」により発生したと記されていた。