(英エコノミスト誌 2020年4月18日号)

売上高の水増し疑惑が浮上している中国のラッキンコーヒー。写真は2019年5月17日、米ナスダックに上場しニューヨークのタイムズスクエアのスクリーンに表示された時のもの(写真:Photoshot/アフロ)

不正を働く企業にとって最悪の敵は、景気の下降局面だ。

 バーニー・マドフ氏が650億ドルものポンジ・スキーム(ねずみ講)を運営してきたことを2008年12月に白状したのは、罪悪感に駆られたからではなく、万事休すだと悟ったからだった。

 その3カ月前に大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻していた。

 市場はメルトダウンを起こし、マドフ氏の顧客からは資金を引き揚げたいとの申し込みが相次いでいた。スキームの資産はみるみる縮小したが、資金を返さねばならない投資家がまだ多数残っていた。

 米国の規制当局は何年も前に内部告発を受けていたのに、詐欺が行われていることに気づいていなかった。マドフ氏を破滅に追いやったのは当局ではなく、景気後退だったのだ。

 架空の投資のリターンから売上高の水増しに至るまで、会計上の問題点を覆い隠すことは好景気の時には容易だ。しかし、不景気になればその覆いは引き剥がされる。

 ニューヨーク大学のバルーク・レブ教授(会計学)が言うように、「景気が良い時は誰もが立派に見えるし、それについて行けないと市場で厳しく罰せられる」。

 過去20年間における大型不正会計の多くは景気下降期に発覚している。

 2007~09年の世界金融危機の10年前にはドットコム・バブルが崩壊し、1990年代後半の「イケイケ」の時代に行われていたエンロンやワールドコムの不正会計が白日の下にさらされた。両社はその後、ほどなく破綻した。

 敬愛されている投資家のウォーレン・バフェット氏はかつて、「誰が裸で泳いでいるかは、潮が引いた時に初めて分かる」と述べたことがある。

 今回はパンデミックのせいで、潮が記録的な速度で引いていった。