セントラルパーク内に設置された仮設病床(写真:ロイター/アフロ)

全データで感染の終息を示し始めた

 ニューヨーク州における、4月17日の死者は540人と、同9日のピークを259人下回り、「入院患者数」「ICU(集中治療室)への移管数」「人工呼吸器装着者数」の医療行為三計数を見ても、入院患者数が先週一週間で2340人減、ICUへの移管数は160人減、人工呼吸器装着者数は182人減と、いずれも減少に転じた。

 この医療行為三計数の動向は、日々のデータでも、4月初めには増加数がピークを打っており、先週に入って減少が続き、しかも減少幅も拡大するなど、明らかに終息に向かい始めたことを示唆している。

 また、日本政府や小池百合子・東京都知事や吉村洋文・大阪府知事も注目している実行再生産数(一人の患者が何人の人間に感染させたかを見る割合)は、ニューヨーク州では既にピークアウトしており、先週には1.2から0.9に下がった。

 4月18日現在、全米の感染者数73万8830人のうち23万6732人(全米の32%)、死者3万9014人のうち1万6967人(同43%)はニューヨーク州が占める。ニューヨーク州のクオモ知事は、感染者数や死者数の多さにもかかわらず、同州は新型コロナを管理してきており、医療崩壊も起こっていないと言い続けてきた。

 医療行為三計数や死者数の変化は、この知事の考えが正しかったことを証明した。

 先週になってトランプ大統領が示唆し始めた米国経済の復活は、経済の中心であり、また感染者数が最も多いニューヨーク州の復活に懸かっている。クオモ知事自身も、それを十分理解しており、先週後半の記者会見では将来の明るさが見えてきたとして、経済活動再開の可能性とその判断基準、やり方についても触れ始めている。

 では、ニューヨーク州がこれまで新型コロナ対応を成功させることができた理由は何だったのだろう。

新型コロナ疑似症患者は素早く皆検査

 クオモ知事は先週、ニューヨーク州の先々週までの過去30日間の検査数は計50万人で、同州の2倍の人口(4000万人)を持つカリフォルニア州(感染者数は全米6位)、人口が1000万人のミシガン州(同5位)と同フロリダ州(同8位)の検査合計より多いことを発表した。

 ニューヨーク州には検査を行える病院・保健所などが301カ所あり、これをフル稼働してきた。先週にはこのうちの50カ所に従来の2倍の検査を行うよう指示している。同州の検査は一段とスムーズに進んでおり、50万件の検査を達成した後の1週間で、10万人弱の検査を実現している(4月18日現在の検査累計は59万6562人)。

 このようにニューヨーク州の特徴は検査数の多さにある。クオモ知事にしてみれば、合計60万人の検査をした結果が累計24万人の感染者の確認なのだ。死者についても、検査を増やしたからこそ、例えば普通のインフルエンザ(同州では年間300万人がかかり死者数も数万人と言われている)と区別ができて、新型コロナが死因だと判明させられたと考えている。

 感染者数の多さについては、ニューヨーク州とトライステーツ(日本の首都圏に相当)を構成する、米国第2の感染者数がいるニュージャージー州の8万1420人、3位であるマサチューセッツ州の3万6372人と比較すれば、同州が極端に多いことがわかる。しかし、これをメディアが「ニューヨークは感染爆発」と呼ぼうとも、クオモ知事はそうは考えていなかったのである。

 ニューヨーク州では、この膨大な検査件数を実現するため、最初に感染者が発見された直後から、健康保険の加盟の有無、検査料支払い能力の有無に影響されることなく、感染を疑う症状が出た州民(疑似症患者)の可能な限り多くを検査ができるよう、検査費用を下げて臨んできた。「迅速かつ皆検査」の発想である。

 もちろん、州全体で感染症検査をできる病院と保健所、研究所が301カ所なので、一日当たりの検査数には限界があった。この方針を発表した3月7日の1週間後あたりから感染者が急増し始めた背景には、不安な症状を感じる患者(疑似症患者)が、どこに検査に行けばよいか周知されたこともあったようだ。