中国の顔認識技術は世界最高レベル。中国にスパイを潜り込ませるのは容易ではない

 子供の頃、庭でもいだ酸っぱい夏ミカンの果汁で、和紙に絵や文字を書いて火鉢であぶると、それが浮かび上がる「あぶり出し」をして遊んだものだ。

 似たようなことだが、新型コロナウイルス禍の中で米中の諜報・情報戦がまるで「あぶり出し」のように露見するするようになった感がある。

 それを見るに、筆者には米国の諜報能力と情報・宣伝戦能力に翳りが見受けられるような気がする。以下、最近の報道から、その一端をお示ししたい。

台湾情報機関の優れた諜報活動

 4月11日付朝日新聞は「台湾が昨年末、WHOに警告「武漢の肺炎で隔離治療」」と題し、次のように報じている。

「新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、台湾当局は11日、世界保健機関(WHO)に対し昨年12月末、『中国・武漢で特殊な肺炎が発生し、患者が隔離治療を受けている』との情報を伝え、警戒を呼びかけていたと明らかにした」

「記者会見を開いた陳時中・衛生福利部長(大臣)によると、台湾側は昨年末から武漢の現地報道などを注視しており、12月31日にWHOに伝え、入境時の検疫も強化した。陳氏は『隔離治療は、ヒトからヒトへの感染の可能性があることを意味する』と指摘し、WHOが台湾の情報を生かしていれば、感染拡大に早く対処できたと主張した」

 この報道で注目されるのは、台湾の情報機関(国防部参謀本部軍事情報局、国家安全局国防部参謀本部電訊発展室及び法務部調査局など)が武漢ウイルスの発生をいち早くキャッチしこれをモニターしていたことだ。

 台湾は、中国の武力侵攻を恐れ、その情報をキャッチするために情報源(スパイと協力者など)を中国全土に埋伏しているのは事実だろう。

 陳時中・衛生福利部長が「武漢の現地報道などを注視しており」と曖昧な言い回しをしたのは、情報源を隠蔽・偽装する狙いからだろう。

 情報を開示する際は「情報源を暴かれないことと、手の内をすべて見せずに小出しにして目的を達成すること、および余韻を残すことで次の情報戦の布石を打つこと」などが原則である。