(写真:つのだよしお/アフロ)

 負のスパイラルに陥りつつある。新型コロナウイルスの猛威が沈静化せず、世界各国は対応に苦慮。日本でも政府から緊急事態宣言が7都府県に発令され、緊迫感は確実に増している。

 東京五輪・パラリンピックの1年延期がIOC(国際オリンピック委員会)の臨時理事会で承認されたのは、3月24日のこと。あれから3週間以上が経過した。世の中はコロナ禍によって来夏に延ばされた東京五輪のことなど、もうどうでも良くなっている。いや、ハッキリと言おう。この危険極まりないウイルスの完全撲滅にメドが立たない今、多くの日本国民にとっては非常に迷惑な大会でしかない。大会参加を目指しているアスリートたちには大変申し訳ないが、これは紛れもなく国民大多数の共通見解だ。

東京五輪が感染の第2波、第3波を呼び込むことに

 今のところ邪悪なウイルスを封じ込める策として「3密」を避けるぐらいしかない以上、世界中から多くのアスリートや要人ら関係者、そして観客を集めてビッグイベントを行うなど自殺行為も甚だしい。実際に今後、日本における感染者の数がピークアウトしたとしても、そこで自粛を解除して人の往来を戻してしまえば「第2波」「第3波」の流行が、津波のように、再び襲いかかってくるという危険なシナリオは有識者の間で懸念されている。

 とかく日本の安倍政権はコロナ禍対応で作ってしまった失点を挽回すべく、東京五輪を経済面でのV字回復の起爆剤にしようと躍起になっていることは、誰の目にも明らかだ。

 しかしPCR検査数の抑制疑惑に加えて、熟慮の末に決定したのが「アベノマスク」と揶揄される布マスク2枚を国民に配布する陳腐な救済策だったことなど、本気でコロナ禍から脱しようとしているとは到底思えないようなツッコミどころ満載の策を乱発し続けている。今の政権は未曽有の危機に直面している民意を全く反映していない。それどころか神経を逆なでするような愚策ばかりで多くの国民から激しい怒りを買っている。そんな中で“安倍首相のレガシー”ともっぱらの「東京五輪」に協力する気持ちなど、人々の心の中には微塵も沸き上がらないのではないだろうか。