米海兵隊の兵士

 世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっているが、安全保障の分野でもこのウイルスの影響が徐々に出てきている。

 世界中が新型ウイルスと戦っている状況にもかかわらず、中国人民解放軍(PLA)は東シナ海や南シナ海などで活発な行動を継続している。

 一方、米軍も、実力をつけてきた人民解放軍に対処するための将来に向けた変革の動きを加速している。

 米海兵隊は3月末に「2030年の戦力設計」(“Force Design 2030”)という米海兵隊総司令官デビッド・バーガー大将の署名入りの文書を発表した。

 バーガー大将は稀にみる改革派の将軍で、「我々は、漸進的な改善変更や旧来の能力の改善バージョンなどの中途半端な勧告を受け入れることはできない」と宣言し、海兵隊の大胆な改革を推進中である。

「2030年の戦力設計」によると、中国の台頭などの新たな安全保障環境に効果的に対処する改革として、海兵隊員1万2000人の削減、戦車の全廃、陸上戦力の骨幹である歩兵大隊の削減、「F-35」の機数削減など大胆な削減を行う提案をしている。

 一方で、海軍前方展開部隊(Naval Expeditionary Forces)の強化、長距離対艦ミサイルや致死性の高い無人機システムの増強を提案している。

 この改革の結果は、日本の安全保障にも大きな影響を与えると予想されるため、本稿において紹介する。

 なお、本稿は、「2030年の戦力設計」だけではなく、バーガー大将の海兵隊改革のエッセンスが書かれた“Notes on Designing the Marine Corps of the Future”や“Commandant’s Planning Guidance”も参考にしている。