(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年3月28・29日付)

世界中で医療従事者に対する称賛の声が上がっている

 毎晩8時、筆者はここパリで家族と一緒にバルコニーに出て、フランスの医療従事者に称賛の拍手を送る輪に加わる。

 手をたたく音は甲高く鳴り響く。パリ市民の多くが田舎の家で自主隔離をしており、街がガラガラだからだ。

 拍手の輪は最も新しい地球規模の儀式であり、イタリアの都会のバルコニーからブラジルのスラム街にまで広がっている。

 また、昔見られた儀式を彷彿させる。人々が沿道に出て、凱旋した兵士たちをたたえた軍事パレードに似ているのだ。

 話はそれにとどまらない。世界では今、兵士への崇拝が医療従事者への崇拝に取って代わられつつある。

 この転換はかなり前からじわじわ進んできたもので、恐らく新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が収束した後も続くだろう。

 長期的には、何年も前から減らされてきた医療サービスへの資金配分が多くの国々で増加に転じるかもしれない。医療従事者が一種の特権階級になる可能性もある。

 兵士崇拝の歴史は、少なくともギリシャ神話のアキレスにまでさかのぼる。

 20世紀には、あちこちの町の通りに兵士にちなんだ名前がつけられ、多額の資金が軍事力に投じられた。